「ハックとクラックと手品と掏摸」

手品と掏摸は、いうまでもなく、全く違うものですが、「手品」という言葉に対する一般の人達の理解度が低いと、似たようなものに見えたりすることがあります。手品ってのは、そもそも、いたずらのようなものから発展してきたものなので、いかがわしい印象を持つ人もいるかもしれません。が、手品ってものをよく理解してる人は、これは娯楽の一種だと正しく判断するでしょう。

ここで、優秀(というと語弊がありますが)な掏摸師がいて、あまりの手先の器用さから「手品師」と呼ばれるようになったとしましょうか。そいつのやることは、掏摸と言う代りに「手品」と言われたりするわけですね。

だからといって、「手品師」は悪い奴だ、「手品」は犯罪だ、なんて言われると、本来の手品師は困ってしまいます。「手品師」がやってることと、本来の意味の手品師がやってることは全然別物なのに、一緒くたにしないでほしいですよね。

じゃあ、いい手品師を「手品師」と呼んで、悪い手品師を「掏摸師」と呼ぼう、なんてことになると、これはこれで変です。例えば、カードマジックを利用して詐欺を働く手品師を「掏摸師」っていうのは変です。もちろん、手品師の大部分は普通にいい人なんですが、善悪で分類されるようなことじゃないですね。

人のふところから取った金品をその場で返すのが手品師で、返さないのが掏摸師、ってな主張も的外れ。対抗して、手品師も掏摸師も人のふところから物を取ることには違いないって非難も、的外れの上塗り。確かにそういう手品もあるけど、そうじゃない手品の方が多い。

人の役に立つ手品師を「白手品師」と呼ぼう、っていわれても、White Magician って白魔術師だから。普通に手品師とかマジシャンでいいじゃん。

まあ、他にもいろいろあるかもしれないけど、手品を分かってないのに手品を非難するのは、いかがなものか? と思うわけだ。

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