B)

アーレ・ハイネセンらと共にアルタイル星系第7惑星を脱出した頃、研究者達は、アダム・トリューニヒトとその妻のエヴァに出逢った。ユダヤ系経済ネットワークの中枢にいた彼等は、貴族の権益と衝突し、共和主義者扱いされたのだ。

アダムは、才気煥発な好青年だった。彼は夢を語った。亡命者の中で経済ネットワークを再構築し、安定した経済状況を作ることで、共和主義者の政治をサポートしたいと。

研究者達も夢を語った。自分達の目標は天才を創ることだが、その過程で多くの人材の才能が開花されるはずだと。その人材は、我々の未来を担うはずだと。

両者は手を組んだ。アダムの資金で研究し、その成果をトリューニヒト・グループの構成員に適用する。その結果、アダムは効率よく利益を上げ、その一部が研究者達に提供される。研究成果は、研究者達自身にも適用され、研究が加速する。正のフィードバックを持った共生関係だった。

その頃から、研究者達は〈ハトゥール〉と名乗り始めた。ユダヤの古い言語であるヘブライ語で猫を意味する言葉である。ユダヤ・ネットワーク出身のアダムにちなんだ名称だ。また、それは、細々と活動しているはずの帝国の〈猫〉と自分達を、はっきり区別するためでもあった。


つづく

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