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自由惑星同盟の発足後も〈ハトゥール〉の研究は進められていた。過去の猫計画と違って教育を重視する〈ハトゥール〉では、まず、学習の仕方が研究された。どうすれば、効率のよい学習ができるか、それをどうやったら伝えられるか、学習する気になるにはどうすればよいのか。

学ぶ価値が真にあるのは、学ぶ方法と学ぶ楽しさだけである。そこまで割り切った。

同盟と帝国が接触してからは、帝国の〈猫〉の動向を探り始めた。特にフェザーン自治領が成立してからは、フェザーンに支所を置き、情報収集をつづけた。帝国の〈猫〉が創るはずの天才への対抗策も、〈ハトゥール〉の目標の一つとなった。

帝国の〈猫〉の方針は、予想通り、血統を重視するものだった。しかも、親の資質を逆転した形の才能が発現したときに、天才が生まれると想定していた。〈ハトゥール〉では、むしろ、親の才能を増幅する形で受け継ぐ方に注目していた。しかし、それだけでは、帝国の〈猫〉に対抗できないことが懸念されていた。

そこで試されたのは、ショックによる覚醒である。幼少期の教育とは全く異質の概念を思春期にぶつけることで、思考に刺激を与える方法だ。賭けの要素はあるものの、成功すれば高い能力が期待できると思われていた。


つづく

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