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「変人の中の変人が天才を生む」

もちろん、平凡な人は天才ではない。天才は、標準を外れた存在なのだ。そういった意味では、天才は全て変人である。しかし、変人が全て天才なわけではない。普通の人は多かれ少なかれ似ているものだが、変人は千差万別である。しかも、たとえ、才能が開花する方向に変わっていたとしても、「普通の変人」では、天才の名に値しない。

つまり、変人達が変人と認めるような人物でないと、天才に近い存在とは言えない。

当時、「変人の中の変人」といえば、ヤン・タイロンを指した。ヤンというのは、自らの意志で〈ハトゥール〉を脱退した男である。〈ハトゥール〉の構成員は、標準的でないという意味では、紛れもなく変人である。その変人の集団からはみ出た者。まさに、「変人の中の変人」にふさわしい。

そのヤン・タイロンが亡くなったときには、〈ハトゥール〉達は慌てた。ヤンの息子にショック法を適用したような状況になったからだ。しかし、ヤンの息子の人格が変わるようなことはなかった。その安定性は、〈ハトゥール〉の注目を、ますます集めた。

折しも、天才をサポートするはずの人材も育ってきていた。〈ハトゥール〉の計画は実を結び始めていたのである。

〈ハトゥール〉は、ヤンの息子、ヤン・ウェンリーを焦点として、可能な限り人材を集める操作を始めた。


つづく

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