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〈猫〉ことエミー・ネーターがフェザーンに向けて旅立ったのは、バーミリオン星域会戦が終結した直後だったので、後から考えると、王朝が代わる直前だったことになる。自由惑星同盟の〈猫〉を探す第一歩として、フェザーンで情報収集しようと思ってのことだ。

しかし、どうやって探せばよいのか見当がつかない。情報屋の〈鼠〉は既にいない。自分で探すしかない。だが、「いるかいないか分からない、名前も特徴も分からない、遠い親戚のようなもの」をどうやって人に説明したらよいのか。帝国の〈猫〉からして世に知られていない(知られてはならない)存在だったので、その実態を説明するわけにもいかない。

あてもないまま、フェザーンのあちこちで、世間話をしながら探りを入れてみた。

「そういう話なら、ハイネセンに行って、トムに相談しなせえ。あいつは、わけの分からねえことの勘所をつかむのがうめえ」

酒場で知り合った、赤ら顔のハンスが言った。

「忘れなさんなよ。トムキャットのトムですぜ」

そう言われたエミーは、少しドキドキした。


つづく

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