4)

兵役に就いたヨブは当然のごとく後方勤務を志願した。ヨブの能力が後方支援向 きであることは明らかであるし、その上であえて苦手な仕事を志願するのはバカ のすることである。

それに、将来ヨブのライバルになる人物は前線よりも後方にいる確率が高い。今 のうちにそういった人達の足を引っぱっておかなければならない。

そういう訳で、後方勤務を始めたヨブは密告と醜聞を武器に有能な人物を次々に 落し入れていった。

もちろん、敵のダメージの大きさや成功率よりも密告や噂の出処を悟られないこ とに重点を置いた。ダメージが小さければ後から傷口を広げればよい。失敗すれ ば出直せばよい。しかし、攻撃の矛先が自分に向いたら不利になるではないか。

そのため、ヨブは流す情報を曖昧にしておき、故意に三割程度の誤りを含めるよ うに心掛けた。詳し過ぎる情報は自らその出自を語るものである。

どの計略も面白いように成功した。そして、相対的にヨブの有能さが目立つよう になり、人々の注目を集めるようになってきた。

注目を集めれば集める程、ヨブの才能は威力を発揮した。ヨブのシンパは徐々に 勢力を増し、兵卒や下士官のみならず士官の中にさえ浸透していった。それは、 将来、軍内部の協力者となるべき者達であった。


つづく