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話の発端は、そう、ざっと五〇〇年ばかり遡るわねえ。ルドルフ大帝の時代。

その頃、ルドルフは、天才を人工的に生み出す研究を秘密裏にさせてたの。その プロジェクトの暗号名が「猫計画」。なんで「猫」なのかは誰も知らないけど。

「猫計画」は一〇年の間にいろんなことを明らかにしたわ。ルドルフの気に入ら ないことばかりだったけど。

中でも一番ルドルフの気に障ったのは「天才とは異常者の一形態である」という テーゼ。天才というのは異常者の異常性がたまたまポジティブな才能となって表 れたものなの。そもそも異常ってのは平均から離れてることであって、それがポ ジティブな方向かネガティブな方向かってのは人間の価値観に過ぎないのよね。 だから、異常者を切り捨てる社会では天才は生まれ得ない。

ルドルフが容認できるはずはないわね。

結局、「劣悪遺伝子排除法」の成立とともに「猫計画」は打ち切り。計画に関係 した科学者達は共和主義者の同類として粛正されたわ。

でも、ほんの一握りの科学者達は逃げのびることができた。そして彼等は誓った のよ。ゴールデンバウム王朝の打倒を。それが可能な真の天才を作り出すことを。


つづく