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私はクラリベル作戦に直接関わることは許されなかった。全てを打ち明けられた とき、私に課せられた使命は、作戦の失敗に備えて「猫」を再興することだった から。とにかく生き残ることが最優先だったの。

そのために、私は「鼠」と一緒に潜伏したわ。

「鼠」っていうのは、「猫」の男なの。数少ない「猫」の男は、ほとんどが、 「猫」の遺伝子を撒き散らすための「種馬」か、情報収集能力を強化された「鼠」 のどちらかだった。私と同行したのは、その「鼠」の最後の生き残り。

そして、私は、新生「猫」の頂点に立つべき者として、「猫」とだけ名乗るよう になった。

数年後に、私の交配相手になる「野良猫」を発見したの。それがシェーンベルク。 あんたの部下だった、あの坊やだったの。その頃は、まだ、憲兵隊にいたころね。

坊やが退役するときに「鼠」が拾って、しばらく私達で飼ってたわ。あのバカ、 平気で人を殺すくせに変なところで初心で純情で、女はからっきしダメだった。 別に急ぐ必要はなかったから、時間をかけて飼い慣らすつもりだったんだけど……。

「鼠」が殺されたの。


つづく