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「なんで、こんなところに出るんだ?」

実験時航艦エルムラントIIで初めて大規模跳躍をしたときのことである。

それ以前の小規模跳躍の実験では何の問題もなかった。時間的にも距離的にも実験精度の範囲内で正確な跳躍ができた。

そこでブルクは、大規模跳躍の実験を口実に、クラウスニッツの捜索を始めることにした。長期の単独作戦行動を可能にするための装備を整え、戦艦ローゲのエネルギー放出パターンから推測した時空点への跳躍を試みた。データの不備はあるものの、誤差一%以内で跳躍できる自信があった。

跳躍後に恒星の観測をもとに時空点を割りだすと、……。

「三十七%ずれただと?」

念のため小規模跳躍を繰り返して捜索したが、ローゲは見つからなかった。

次に、中規模跳躍を実験していくうちに、事情が分かってきた。時間跳躍には、空間跳躍では見られなかった非線形性が観測された。より正確にいうと、相対論的な意味の四次元距離は予想通りなのだが、時間と空間の混ざり方に強い非線形性があるようだ。

この非線形効果の詳細を解明しなければ、クラウスニッツの捜索はおろか、自分達の帰還さえおぼつかなかった。


つづく

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