6)

「どうやら、戦艦ローゲに間違いないな」

艦形を確かめ、帝国宇宙軍の紋章らしきものを確かめ、艦名の痕跡らしきものを確かめたあとで、これはクラウスニッツの乗艦であると、ブルクは、ようやく断定した。

外から観測しただけでも、千年以上は経過していることが分かるほど表面が劣化していた。周辺には微量の窒素ガスが検出されたが、艦内からの放出は既に止まっているようだった。おそらく艦内は真空状態なのだろう。熱の放出パターンからみて、いかなる動力も動作している気配はない。人体が発生するはずの熱量も、艦内に存在しないようだった。

「……、中を、……、見てみよう」

ためらいながら、ブルクは指示を出した。

エアロックは開かなかった。近くの恒星の影響で、真空溶接されてしまったものと思われる。ドリルで慎重に孔を開け、内外の気圧に差がないこと(つまりは中も真空であること)を確かめ、豆粒大の無人探査機を送り込む。その付近は完全に無人だった。古びてはいるが、艦体構造の強度は保たれている。生物、爆発物、その他の脅威は観測されなかった。

実際に中に入ってみた。外殻を数メートル四方焼き切り、念のため、五名の陸戦隊員に先行させた。安全確認の後、ブルク率いる実験班選抜隊と護衛兵が入っていった。


つづく

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