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「みんな、どこに行ったんだ?」

ブルクは途方に暮れた。

艦内を隈なく捜索したが、遺体もその痕跡も残ってなかった。衣類も食料も宇宙服も脱出用シャトルもなかった。電子的な記録媒体は何も読み取れないほど劣化し、紙などによる記録も残ってなかった。どこかに脱出したと仮定したところで、この星系内に適当な避難場所は見当たらなかった。しかも、探知可能な範囲にシャトルらしきものは無かった。

軍人達の間では、絶望した彼等が、例えば恒星に向って旅立ったのだという噂がささやかれた。しかし、絶望して死を選ぶクラウスニッツを、ブルクはどうしても想像できなかった。

実験班の一部のスタッフは、脱出後に戦艦ローゲが跳躍したという仮説を立てた。しかし、その仮説を検証する材料は何も無かったし、そもそも、仮説が正しかったとしても、どの時空点から跳躍してきたのかを推測する術は無かった。

その場で出来る全ての調査を終えたブルクは、時間跳躍実験の再開を決意した。


つづく

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