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士官学校を卒業した私はグリンスメルハウゼン艦隊に配属され、駆逐艦エルムラ ント号の参謀次官を拝命した。参謀次官というのは要するに参謀の副官で、参謀 の判断の元となる情報を整理するのが主な役目である。私は艦内及び艦隊内の情 報の分析を命じられた。願ってもないチャンスだった。私は慎重に同志となるべ き人物や情報源となるべき人物を探していった。

結局、ヘレナに報告可能な長期休暇までに士官から二人、下士官から五人の同志 を得た。情報提供者となるとよりどりみどりだ。どんな組織であれ現状に不満を 持つ者は5%以上はいる。ましてや堕落した貴族制の堕落した軍となれは不満を持 つなという方が無理だ。その中から厳選しても一艦隊当り千人やそこらはすぐに リストアップできる。これで、こちらの意図を悟られずに提供者を動かすことさ えできれば、一般的な情報は意外なほど容易に手にできる体制になった。

その後、ワイツェッカーやクラインマン氏と連絡をとりながら、私は数年かけて 組織を大きくしていった。同盟への情報提供を意図した組織だったが、適切な受 け手が見当たらないため、当面は組織の強化に専念した。


つづく