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こちらの目論見通りに除隊処分となったシェーンベルクは情報屋に拾われて殺し 屋になったようだ。元暗殺部隊の残り四人のうち三人がシェーンベルクを暗殺し ようとしている。特に元部隊長のアイレンベルガー中尉が動いているのはシェー ンベルクには脅威だろう。あとは勝手に潰し合ってくれる。彼等のことは当分放っ ておくつもりだった。

ところが、「リッター」がシェーンベルクの技術に興味を持ち始めた。そういえ ば、士官学校時代のワイツェッカーは射撃が比較的得意だった。「リッター」の 依頼でシェーンベルクによる狙撃をセッティングすることになった。ブラウンシュ ヴァイク公の息のかかった政治家の子分の狙撃をシェーンベルクに依頼し、その 狙撃地点を予測し、狙撃手からも標的からも見えない観客席を用意し、ワイツェッ カーを招待する。何だって私がこんな苦労しなきゃならんのだ。

狙撃と「観戦」は成功した。ワイツェッカーは、「あれは見事としか言いようが ない」と嘆息したそうだ。

そんなことをしている間にも、ワイツェッカーはミューゼルの側面援護を確実に 行なっている。噂を利用してミューゼルの味方を作るというのだ。私はシェーン ベルクの射撃よりも、ワイツェッカーの噂を操作する技術の方がよほど見事だと 思う。


つづく