「あら、おどろいた」
フェルナーを見た「猫」はそう言ったが、全然おどろいたようには見えなかった。
「久し振りだね。四年振りぐらいかなあ?」
軽く飲み喰いしながら、しばらくは近況報告や世間話---この二人だとなぜか 「情報交換」という方が似つかわしい---をしていたが、やがてフェルナーは思 い出したように尋ねた。
「そういえば、あのときかくまってくれた理由を話してくれる約束だったよね?」
当時、オーディンでフェルナーをかくまうということは、ブラウンシュヴァイク 陣営にもローエングラム陣営にも逆らう、非常に危険な行為であった。その危険 をかえりみずにかくまってくれた理由をそのときにも尋ねたのだが、すぐには答 えず、いつか再会したらそのときに教えると約束したのだった。
「女の昔話なんて、話す男ごとに違うものよ。おとぎ話を聞きたい?」
「ああ、是非聞かせてくれ」