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クラリベルの娘を後宮に入れるのは、実は大きなリスクを伴なっていたわ。

クラリベルの娘であるってことは、遺伝子的には最高の「猫」であるってこと。 そして、ゴールデンバウム家は「家猫」に準ずる遺伝子を持ってる。ルドルフは 正真正銘の天才だったから。この両者の間の子供は、「獅子」に準ずる者になる か、最強の「犬」になる確率が高かった。どちらにしても「獅子」の敵になる公 算が強いわ。

だから、後宮に「猫」を送り込んで、クラリベルの娘に「猫」の秘術を授けたの。 妊娠しなくてすむ方法を。

他の「猫」達は「犬」の排除に専念したわ。十人の「猫」が差し違えてやっと一 人の「犬」を倒せるかどうかという有様だったけど、一人でも残すと「獅子」の 邪魔になるから。

確認されてる中で最後の、そして最大の「犬」であるベーネミュンデ侯爵夫人が 倒れた頃には、「猫」は私しか残ってなかった。事実上、「猫」は壊滅したの。


つづく