翌日、ラグプール刑務所で暴動が起き、フェルナーは負傷した。やっと全快した と思ったら、今度はルビンスキーの火祭りである。「猫」の話が気にかかっては いたが、調査するにも再訪するにも暇がなかった。
やっと時間ができたのはハイネセンを離れる前日のことである。
バーを再訪したフェルナーは唖然とした。あたり一面が焼野原と化していたのだ。 ラグプールのとばっちりなのか、それとも火祭りのとばっちりなのか。「猫」は 無事なのだろうか。事情を訊こうにも近所そのものが無い。
「もし、あれが本当の話だと分かったところで、誰の得になるわけでもないか」
そう判断したフェルナーは、それ以上の調査を打ち切り、この件について忘れる ことにした。