リヴァモア日記:第8週

ヨセミテ

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More先生が帰ってきた。先週と今週はサンフランシスコの日本語学校に行くのを 月曜にしたそうだ。あさってからはパリに行くらしい。 サンフランシスコ〜サンディエゴ〜サンフランシスコ〜パリ〜……、 いつリヴァモアにいるんだ?


(3月19日・火曜日) : [次の日] ; [前の日] ; [次の週] ; [前の週] ; [目次]

明日から今週いっぱい、私はまた野放しだ。


(3月20日・火曜日〜3月23日・土曜日) : [次の日] ; [前の日] ; [次の週] ; [前の週] ; [目次]

結局、研究所に出て来る。
でも、出て来る時間がだんだん遅くなる。
研究はなかなか進まない。

湯上さんと花菱に行く頻度が増えてくる。車で連れてってくれて、 後で送ってくれるのだ、楽だ。

しかも花菱で長話してると、だんだんおかみさんのサービスが増えてくる。 結局、行くごとに相当飲んでしまう。

そんなこんなで堕落した日々である。


(3月24日・日曜日) : [次の日] ; [前の日] ; [次の週] ; [前の週] ; [目次]

今日はStanfordに来ている私の友人(通称「隊長」)と湯上さんと三人で ヨセミテに行く。(実は隊長と実際に会うのはこれが初めてである)

朝8時前に隊長が私のアパートに到着する。Stanford〜Livermore間は 約1時間なので、彼は7時頃に出発したはずである。

近くのスーパーの公衆電話で湯上さんを呼出す。程なく合流して出発。

出発してすぐ、近くの山の上で風車が回ってるのを見つける。 (風が弱いせいか、あんまり回ってないけど) 山の近くを走ってる車と比べると相当に大きいようだ。 緑一色のなだらかな丘であるせいか、遠近感がない。

山を越えると地形はまったいらだ。やがて360度地平線が見えるようになる

途中ややこしい道のつながり方をしてる所があった。 奈良戦記の悪夢が一瞬頭をよぎるが、難なくクリア。

アーモンド畑にさしかかる。見渡す限りアーモンドである。 行けども行けどもアーモンドである。誰がそんなに食うんだ?

そのうち、地形がでこぼこになってくる。地形がでこぼこになると道も 上下しだす。丘を切り開いて道を平にするという発想はないようだ。
やがて、だんだん山道になってくる

出発して3時間、やっと国立公園の入口に着く。入場料は車1台につき5ドル。 公園の中心部までは、あと30分ぐらいかかる。

山の中をひたすら走る。ひたすら山である。木がいっぱいあって、視界が悪い。 ところどころ雪が残っている。 景色が変わらないと文句を言ってると、いきなり景色が変わった。 そこら中の木が枯れて、倒れている。緑が全くない。 いやに殺伐とした風景やなあ。

殺伐とした風景の中をしばらく走ってると、トンネルが見えてきた。 「トンネルをぬけると景色が変わるかなあ」と、どっかの小説みたいなことを 言ってたら、本当に変わった。ものすごくきれいな景色である。 視界がひらけてまわりの緑がよく見える。遠くの山の上には雪がかぶさっている。 ほとんど感動的な景色である。

車が何台も止まってる場所があったので、我々も止まってみると、滝があった。 小さい滝だが、水量はゆたかだ。道の左にある滝の水が道の下を通って 右へ流れていってる。下の方に下りてる人がいたので、我々も下りてみる。 別に下りるための道があるわけでなく、単に下りることが可能だというだけの場所だ。 流れてる水にさわってみると、すんごい冷たかった。 あたりまえだ。ところどころに雪が残ってるような所なんだから。

しばらく進むと、また車が止まってる所がある。しかし特に何もない所だ。 しかも何台もある車の中にも、その辺りにもあまり人がいない。 下に下りられるような場所もない。謎だ。
しかたがないので進んで行く。地図によると、この先に滝があるという。 さっそくそちらへ向かう。

見えてきた。でかい!適当な所で車を止めて歩く。いくら歩いても近づかない。 ……やっと辿り着く。でかい!!半端じゃない!水しぶきがすごい。 長居は無用。引き上げる。

先に進む。でかい駐車場で車を止めて、食料を探す。 カフェテリアを見つけて入ってみるが、営業している雰囲気ではない。 どうやら、何かの学会の会場になってるようだ。 しかたがないので、ファーストフードにする。 単なるチーズバーガーを「これがヨセミテ・バーガーか」とか言いながら食ってみる。 むなしい。

話しているうちに、初対面だった隊長と湯上さんは専門が近く、 共通の知り合いがいっぱいいることが分かった。 偶然といえば偶然だが、リヴァモアやらスタンフォードやらに来る連中だから、 そんなに不思議なことではないのかもしれない。

偶然といえば、私と隊長が知り合った経緯も、かなり偶然の要素が大きいのだが、 それはまた別の物語になる。

これから先は駐車場が少ないようなので、しばらく歩いてまわる。 木々の間を歩いて行くと、小川があったり、リスを見かけたり、 優雅なひとときである。

この辺の山はでかい岩のようなものである。日本の山のような土の塊ではない。 そこら中に数メートルの岩がころがってる。 岩で出来た山だと、相当に急な傾斜がありうる。 高さ何百メートルもの垂直に切り立った所が随所にある。 これでは滝も豪快になるはずだ。

歩くのにも飽きてきたので、シャトルバスを使って、ヨセミテ村に向かう。 博物館には、この辺の立体地図や、写真や、この辺にいる動植物の絵や、 この辺の地形が出来た経緯の説明などがあった。

近くにネイティブ・アメリカンの集落の遺跡があった。 そういえば、Yosemiteという地名は、あまり英語らしくない。 ネイティブ・アメリカンの言葉が語源になっているのだろうか? アメリカの地名の多くはそうであるので、ここもそうである可能性は高い。

ヨセミテの滝があるというので行ってみる。村から既に見えている滝である。 村から見ると、水がゆっくり落ちてるように見える。いかにでかいか想像がつく。 近くまで行ってみるが、あまりに近いと全体像が見えない。 丁度いい所まで下がってみると、滝の説明が書いてある辺りだった。 説明にある数字を我々なりに換算してみると、二段ある滝の高さの合計が 六甲山の高さに匹敵するようだ。
でかい。
それが線状ではなく、ちゃんと幅があるように見えるとうことは、 相当に水量があるということだ。さすがに大陸の自然は豪快やなあ。

シャトルバスで駐車場に戻って帰路につく。 途中、夕食をとって、リヴァモアに帰り着いたのは8時半。 出発してから12時間以上経っている。隊長にとってみれば、 これから1時間かけてStanfordに帰るわけだから、Stanfordを出発してから 14時間以上かけての帰還が。しかも運転はずっと隊長がしている。 ハンドルを握ってる時間だけでも9時間になる。ごくろうさん。

ヨセミテの印象は、「豪快かつ美しい」である。 この二つが重なることはめずらしいのだけれども。

第八週が終わる。