「さあて、どこ案内しよっかな? 今、丁度アレやってるから行ってみよっか」
岩ちゃんはそう言って、僕の手を取って歩きだした。
「この前、死んだ人が変な人でねえ。あたしが『岩ちゃんって呼んで』って言っ たら『自分も岩ちゃんですよ。はっはっはっは』って豪快に笑うのよ。なってっ たっけ? 石野岩男? なんかそんな感じの堅そうな名前だったわ」
僕はびっくりした。石野岩男は行方不明になった友人の名である。
「岩男のやつ、死んでたのか」
「あれっ? 知り合いだった? だから今日あたしが呼び出されたのかなあ? 今日、
本当は非番なんだけどね」
「あいつ、今、どこ?」
「賽の河原。どうしても行ってみたいていうから案内してあげたの。行ったら大
はしゃぎでさあ、『本物だー!!』とか訳分かんなこと叫びながら走り回ってたよ」
「会えないかなあ?」
「無理無理。霊界って地上と時間の流れ方が違ってるんだけど、あっちは特に早
くって、行って帰るだけでも地上では十年ぐらい過ぎちゃうよ。彼、死んでるか
ら気にしてないけど、あんたは困るでしょ?」
確かに困る。
「無理なことは忘れてさあ、こっちこっち」