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ややこしい話だから長くなるわよ? いい? どこから話そうかなあ?

私が生れ育った村は女ばかりで、男はほとんどいなかったわ。場所? いいじゃな い、そんなこと。どうせ、もう、跡形もないんだから。

そこは「猫の里」と呼ばれていてねえ、そこの女達はみんな猫にちなんだ渾名を 持っていた。私は子供の頃はガキ大将だったから「山猫(ベルク・カッツェ)」な んて呼ばれてたわ。女でガキ大将はないだろうって? しかたないじゃない。男の 子がいないんだもん。そういう役割の子も女の子の中から出てくるってわけ。

その頃はそういう状態が普通だと思ってたから不思議に思わなかったけど、考え てみれば不思議な村よねえ。十代の頃には世間の様子も分かってきたから、さす がに変だと思い始めたけど、大人は誰も教えてくれないし、聞ける雰囲気じゃな かったの。何かとんでもない秘密がありそうで。

あれは十六の頃だったかなあ。何年前だって? 大きなお世話よ。とにかく、その 頃に私と同じ年代の子が一人ずつ村の長老に呼ばれて、話を聞かされたの。長老 といってもお婆さんなんだけどね。話を聞いて出てきた子はみんな口数が少なく なってた。これはきっと、この村の秘密を聞かされるんだな、と思ってたら、私 の番がきたの。

そこで、聞かされたのは、予想を遥かに越える、本当にとんでもない話だった。


つづく