2)

「安心したついでに御聞きしたいのですが」
マートブーホは切り出した。
「この輸送作戦の目的はなんでしょうか?」
「君はどう思う?」
「演習のためだけにしては規模が大き過ぎますし、アムリッツァに運ぶとなると、 やはりイゼルローンを取り返す準備ですか?」
「ちがうな。これは純粋に推測だからそのつもりで聞いて欲しいのだが、この作 戦の目的地は辺境であればどこでもよかったはずだ。イゼルローン方面にしとけ ば口実を作りやすいからアムリッツァを選んだだけだろう」
「どういうことでしょう?」
「先の皇帝陛下は後継者を定めぬまま崩御された。イゼルローンを攻めない理由 も、辺境に少しでも物資を置いときたい理由もそれだ」
「……内戦……ですか」
「軽々しく口にするなよ?」
「もちろんです」

「しかし、そうなると、妨害の入る可能性はないんですか?」
「そこだよなあ、問題は。これは卒業試験だから、無人艦でも使って模擬戦闘ぐ らい計画してんじゃないのか? それが途中で擦り替わってたりたりしたらやっか いだよなあ。敵さんはどうせ表立っては動けないだろうし、こっちの意図をどこ まで分かってるかも疑問だけど、いろんなパターンを想定しといた方がいいだろ うね」
「敵の規模によって、いくつかの戦術パターンを作っときます」
「しかし、まともにやったら敵の兵力の方が上のときに対処できないな」
「何か秘策でもおありですか?」
「……。そういえば、この艦にはブルクが乗ってたな?」
「は? ブルク技術少佐ですか? はい、工兵隊を一小隊連れて乗っているはずです」
「何かの役に立つかもしれないと思って乗るように言っといたんだが、ひょっと したら役に立つかもしれんな。ブルクを艦橋に呼んでくれ」

マートブーホと艦橋に到着したブルクを相手にクラウスニッツは説明を始めた。


つづく