8)

「操作卓の裏は強度が要らないから、少々傷つけても大丈夫なんだよ」

かつて、操作卓の裏をアーミーナイフで署名を刻み込んでた現場をブルクに見られたクラウスニッツは、そう言って照れ笑いをしてた。ハードウェア・ハックをしたときに、どこかに独自の図形を刻むのが習慣だという。クラウスニッツは凄腕のハッカーだった。

実は、クラウスニッツ・システムを余人が活用しきれないのも、そこに原因がある。効果的に集中砲火を実行するために作られたこのシステムは、実は、小さなソフトウェアの集合である。状況に応じて、それらをその場で組み合わせて使う。うまく運用するためにはハックの才が必要になる。実戦を通じて、ハッカーがハッカーのために創ったシステムなのである。

当然、単純な解決策がある。クラウスニッツ・システムをうまく運用するためには、ハッカーに戦術指揮をさせればよいのである。そして、ハッカーは技術士官の中に何人もいる。つまり、この解決策は、第二・第三のクラウスニッツを生むことになる。軍を信用していないブルクに許容できる話ではなかった。

さまざまな想いを秘めながら、ブルクは捜索の続行を指示した。


つづく

[目次へ戻る]