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虫の好かない奴というのはどこにでもいるものだが、幼年学校の同期だった金髪 の儒子(こぞう)と赤毛の腰巾着ほど虫の好かない奴等は珍しい。金髪の儒子はた かだか下級貴族のくせに先天的にえらそうだし、赤毛の腰巾着は腕っぷしが強く、 俺に匹敵するほどの射撃の腕を持ちながら、いつも金髪の儒子にへつらってやが る。しかも、二人とも何やってもそつなくこなし、できて当然だという顔をしや がる。かわいげがないったらありゃしない。

しかし、俺はそこらの大貴族の馬鹿息子どもと違って、奴等にちょっかいを出し たりはしなかった。奴等の得意分野で挑むほど俺は馬鹿じゃない。

俺の得意分野といえば射撃しかない。赤毛もなかなかの腕だが、俺には勝てない。 だが、教官は実戦では奴の方が役立つだろうと言ってる。俺の方が命中精度は高 いのだが、構えてから撃つまでが奴の方が一呼吸早いからだ。まあ、言ってるが いいさ。俺の射撃は芸術なのだ。スコープの向うに獲物を捉え、羽毛の様に軽く 引き金を引くあの手応え。それが分からない輩に理解してもらおうとは思わない。

とにかく、幼年学校での退屈な時間は過ぎ去り、射撃の腕を買われた俺は憲兵隊 特殊部隊に配属された。


つづく