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やがて入手できた情報によると、戦死、退役、個人的な裏切りには充分対処でき るこの機関も、それに加えて大規模な摘発となると無傷ではいられなかったよう だ。我々との協力を申し出てくれた我等が友人ゾントハイマー大佐は23122とい うインデックスを持っているが、「親」「兄弟」「又従兄弟」が無く、その他の 経路も試してみたが上位へ連絡する手段が見つからないそうだ。三十年以上前の 混乱から孤立した組織を前任の23122から引き継いだという。

三十年以上前というと第二次ティアマト星域会戦の頃になる。すると、大佐の率 いる機関は伝説のミヒャルーゼン機関の破片なのだろうか? この組織の元になっ た組織は、組織を作った人物の一人の頭文字を取ってS機関呼ばれていたそうだ。 だとするとその`S'はジークマイスター提督ではないだろうか? なんにしても、 強力な味方ができた。活用方法はじっくり考えなければならないだろう。

私はゾントハイマー大佐の組織(ゾントハイマーの頭文字もSであることからS2機 関と呼ばれている)の存在を「リッター」から隠蔽した。実はこれはそれ程容易 なことではない。私はS2機関からの情報を知らないものとして行動しなければな らないし、「リッター」から得た情報を不用意にS2機関に流す訳にもいかない。 さもなければ、噂の伝播の様子から簡単にS2機関の存在を推測されてしまうだろ う。ワイツェッカーならそれができるはずだ。

私は同時に「オーディン共和戦線」は拡大を停止し、末端の構成員をS2機関に組 み込んでいった。ただし、「オーディン共和戦線」の中核部分はそのまま残し、 私とヘレナ以外はS2機関から完全に切離した。これで、たとえ「リッター」が 「オーディン共和戦線」を潰しにかかっても、私とヘレナさえ消えればS2機関を 残すことができるだろう。

こうして、「オーディン共和戦線」は安定期に入った。


つづく