典型的な論じ方において, 日本人は, 「ようするに何を述べたいのか」を明言 しません.小野田博一「論理的に考える方法」
古来の日本語には, 段落という概念はなかった. 明治以降に, 欧文におけるパ ラグラフが輸入されたのである. どうやら, 輸入されたのは形式だけのようで ある. 多くの人は, 適当な字数で恣意的に区切っている.
しかし, 事実や論理を明確に伝える文を書くためには, パラグラフの概念をき ちんと理解すべきだと木下[1]は主張する.
一つのパラグラフは, 一つのトピックに対して一つのことを述べるのが基本で ある. 原則として, その段落の内容を端的に表わす文と, それを補足する文で 作る. 前者は, 「トピック・センテンス」と呼ばれる. 場合によっては, 一文 のみのパラグラフもある.
「理科系の作文技術」[1]に挙げられた例文に従って説明しよう.
A君は根っからのスポーツマンだ. 夏は水泳, 冬はスキー, 春と秋はテニス と, 日焼けのさめる間がない. いちばん年季を入れたのはスキーだという.
この段落をひとことで要約すると, 「A君は根っからのスポーツマンだ」であ る. これがトピック・センテンスだ. この段落は, 「A君」というトピックに 対して, 「スポーツマンである」ということを言っている.
それ以外の文は, トピック・センテンスの内容を, 具体的に, くわしく説明す るものか, 他のパラグラフとのつながりを示すものの, どちらかでなければな らない. トピック・センテンスをそのような意味で支える文でなければ, パラ グラフに含めてはいけない.
トピック・センテンスは, パラグラフの最初に置くのが最も分かりやすい. 中 間や最後に書かれることや, 明示的には書かれないこともある. しかし, 可能 な限り, 最初に明示的に書くのがよい.
全ての情報を, トピック・センテンスに詰め込もうとしてはいけない. 前回, 基本文に必要な情報を追加して文を作ったのと同じで, 補足の文をトピック・ センテンスに追加して, 段落を作ればよい.
このような作り方をされた文章は, 段落ごとのトピック・センテンスを並べれ ば, 文章を要約できる.
段落の次の段階は, 節であったり章であったり文章全体であったりする. そう いった大きな枠組の書き方を理解する近道は, 伝達型文章の正しい読み方を習 得することである.
よって, 次回から何回か, 正しい読み方と, それを書き方に転ずる方法を解説 する.