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「伝達型文章の作文技術」:03-04

03: 読み方

03-04: 文章の骨格


「骨まで愛して」
歌謡曲の題名

・骨組みの取り出し方

縮約や要約をさらに進めると, 要点を取ることにいきつく. これをうまくやれ ば, 文章の骨格が見える. 以下, 大野晋[1]が「日本語練習帳」で勧める方法 を見てみよう.

  1. 段落ごとに要点を取り, 30字以内にまとめる. これを箇条書にする.
  2. 項目をまとめ, 半分の項目数にする.
  3. もう一度, 項目をまとめ, 半分の項目数にする.

こうやってできるのが文章の骨格である.

文章を書くときには, まず, そのような骨格を作り, 逆の作業で拡げていくと よい. 骨格の作り方については, またの機会にゆずる.

・論文紹介

他人の伝達型文章の内容を紹介する機会を持つことがある. そのような場合に, 上記の方法で文章の骨格を取り出すのは, 非常に役立つ. ここで, 私が勧める, その先の標準的な作業を解説しておこう.

  1. 伝達型文章は, 多くの場合, 結果をまとめた部分がある. 多くは結論部に あるが, 序論にある場合もある. 著者が最も重要だと考えている結果を, 骨格の中から抜き出す. それは一つの場合もあるし, 複数の場合もある.
  1. その結果を説明するための, 最低限必要な情報を骨格から抜き出す. その 結果の意義が分かるだけの背景, 結果につながる目的, 結果の導出過程, そういった事項を抜き出すのである.
  1. そうやって抜き出された事項を説明する方法を考える. どの程度詳細に説 明するかは, 説明の対象である人達の知識と, 制限時間とで決まる.

このやり方をする場合, 完全な骨格のみよりも, 多少の具体性が残っている方 がやりやすいかもしれない. その場合は, 骨格を抜き出す作業を(1)か(2)に留 めておくのも一つの手である.

原則としては, 元の文章の順序通りに説明するのがよい. それが一番無難であ る. しかし, それ以上に伝えやすい順番があれば, 元の文章に書かれている順 番には, こだわらなくてよい. 要約を説明するときの最適な順番は, 完全な文 章にとっての最適な順番とは, 違うかもしれない.

ここでは, 元の文章のみを材料にしたやり方を示した. しかし, 元の文章に欠 けた部分を補う方がよい場合もある. 元の文章が対象とした人々の範囲と, 紹 介の対象の範囲は, 一般に異るからである.


  1. 大野晋: 「日本語練習帳」, 岩波新書 596 (1999年).

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