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我輩は猫である。名前は「マダナイ」。死んでから随分と経つ。

我輩が死んだのは、まだほんの子猫の頃じゃった。あの頃は丁度遊びざかりで、 毎日が楽しゅうてしょうがなかったのお。あんまり楽しいもんじゃから死んだ のにも気がつかんかった程じゃ。

死んでからも我輩は毎日楽しく遊んでおったのじゃが、ある時、伝説を聞いた。 その伝説によると、我々猫族の幽霊はほとんどの人間には見えんが、ごくまれ に我々のうち一匹を見ることの出来る人間がおるそうじゃ。しかも、同じ一匹 を見ることの出来る男女が結婚すると、その猫は二人の子供として人間に生ま れ変わるという。

下らん迷信じゃと思うておったし、そんな男女がおったというても出逢うとは 限らんし、逢うても結婚するとは限らんから、あてにはしておらんかったがの、 この前、我輩を見ることが出来る男を見つけてしもうた。こりゃなかなか面白 いことになったもんじゃと思うてしばらくつきまとうておったら、今度は我輩 を見ることが出来る女まで見つけてしもうた。

はてさて、伝説が嘘か真か、結果が分かるまで一休みするかの。


つづく