軍内部に支持母体の原形を作ったヨブは実家と軍の両面から軍需産業への接近を 始めた。また、政府上層部の実質的なブレインとなりつつあるオリベイラの協力 を仰ぎ、政界での人脈を作り上げた。さらに、実家の持っていたフェザーンへの チャンネルを極秘裏に再開し、情報収集に使った。
政・軍・財に基盤を持つ有能な政治家として売り出した頃には民衆を煽動する技 術はほぼ完成していた。民衆はヨブの容姿と言葉に酔い、熱狂的にヨブを支持し た。
「こいつらはバカだ」
ヨブはそう思った。
本格的な選挙運動を始める前に、裏の実動部隊として憂国騎士団を作った。その 中核構成員はヨブが義務兵役に就いていた頃にヨブの密告によって落ちこぼれて いった連中であった。あれから十年経っても立ち直れず、うだつがあがらないの を世の中の所為だと考えてる彼等は、ヨブの口車に簡単に乗せられたのである。 密告の犯人がヨブであったことにも気がつかないまま。
「バカにも程がある」
ヨブは嘲笑った。