「俺たちは、どこから来て、どこへ行くんだろうな」
尋常ではないほど密集した星々を眺めながら、エンリコ・ブルク退役技術中佐は、つぶやいた。
「むしろ、『いつ』って方が重要でしょうな」
独り言のつもりの言葉への思いがけない返事にブルクが振り返ると、そこには、ロンメル予備役少佐がいた。
「艦長、おいででしたか」
「お邪魔したようで、申し訳ない。観測結果が出ました。時間は新帝国暦前一万二千年ごろ、場所は、ご覧の通り、銀河中心部です。詳細は、マーフィー主任技術員にお聞きください」
ひとつため息をついたブルクは、かつて見たことがないほど星でいっぱいの宇宙をちらっと見たあと、
「艦橋へ行きましょうか」
そう言って、出口へと歩きだした。
実験時航艦エルムラントIIの展望室での出来事である。