「空間を跳び超えることが出来るのなら、時間も跳び超えられるのでは?」
その発想がキッカケだった。
自分の研究所を立ち上げ、クラウスニッツが失踪したワープ事故をブルクが調査していたときのことである。他の艦に記録された戦艦ローゲのエネルギー放出パターンを統合してみると、ワープエンジンの禁止された操作に似ていることが分かった。何故禁止されているのかを解明した研究を、ブルクは見たことがない。
そもそも、出口が作られなければワープしないとされている。その場合の事故は、単にワープインしないとか、その場で爆発するとか、そういったものだ。しかし、ローゲは、ワープインした。ワープアウトが確認されなかっただけである。「どこ」にワープアウトしたかが問題だと思って観測結果に合うパラメータを探したが、うまくいかなかった。が、「いつ」という要素を入れて探してみると、うまくいってるように見えた。
しかし、時間跳躍を実験的に検証した者は、誰もいない。その可能性を示唆した者はいたが、あくまで理論モデルの一つとして提示されたに過ぎず、実験での確認は何一つ行われてはいなかった。
それを確認するとなると、ブルクが立ち上げた研究所では資金的にも人材的にも力不足だった。軍の協力が必要だとブルクは判断した。